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近年、産業構造においてサービス業の成長が目覚ましく、サービスを提供する企業と就業人口は増加傾向にあります。そしてサービス企業の規模が大きく複雑な組織になると、組織内の命令系統が複雑になり、サービス従業員がふたり以上の上司から指示を受ける「役割コンフリクト」が発生する場合があります。またサービス企業間競争が激しい業界ならば、戦略の変更や人事制度改革などがあり、サービス従業員は自分の役割が分からなくなる「役割のあいまい性」が発生する場合があります。そして従業員が役割コンフリクトや役割のあいまい性を感じる職場では、従業員の職務満足が低下し、パフォーマンスも低下します。サービスを提供する企業において、サービス従業員の役割にはいくつかの特色があります。

岡部倫子氏は、フランスで航空MBAを、日本で博士を取得した経験を活かし、サービス企業と従業員の感情労働の研究を行っています。氏によると、サービス従業員の役割には、感情をコントロールする感情労働がつきものです。感情労働とは、サービス業に従事する職業人が行う労働形態です。サービス関連企業がサービスを提供する目的は、商品やサービスに付加価値をつけて利潤を最大に上げることですが、そのためには顧客に満足してもらうことが重要です。企業がサービス従業員に期待することは、顧客に対応する際に、感情をコントロールして適切な対応をすることが含まれます。例えば、航空会社の客室乗務員に期待されることは、安全と保安はもちろんのこと、明るく親切な態度で顧客に対応することです。そのため、職務中の乗務員は、ネガティブな感情を誘発される状況に遭遇したとしても、感情をコントロールして適切な対応をします。

岡部氏は論文の中で、感情コントロールする際に、サービス従業員は二つのタイプの感情戦略を用いることを指摘しています。表層演技と深層演技です。サービス従業員が感情のコントロールに感情戦略を用いる目的は、企業が従業員に望む感情を自然に感じられない場合に、演技するような方法で、企業における自分の役割を演出し感情を表現することです。「表層演技」とは、従業員が自分の感情を変えずに、一時的に表情と態度を変えて顧客に対応する感情戦略です。他方で「深層演技」とは、努力により自分の感情をコントロールし、企業が求める感情が自分の気持ちと一致するように、自分の気持ちを修正して顧客に対応する感情戦略です。このタイプは責任感の強い人に見られます。

岡部氏は論文の中で、感情労働の一環である「アフェクティブ・デリバリー」の効用を述べています。アフェクティブ・デリバリーとは、ポジティブな感情表現を積極的に用いて顧客に対応し、顧客満足を向上させることです。アフェクティブ・デリバリーは、顧客の満足度を向上させるのみならず、従業員が感じやすい感情的なストレスの軽減に役立ち、バーンアウト(燃え尽き症候群)を予防する効果があります。アフェクティブ・デリバリーは、従業員の感情を適正に保つためにも必要であり、上手に用いて従業員のストレスを軽減させることは、従業員のみならず企業にとっても有益となるでしょう。感情コンピタンスとは、企業・組織における自分の役割にふさわしいと思える感情を感じ取り、表現できる能力を指します。アフェクティブ・デリバリーを活用することで、企業内に感情コンピタンスの高い従業員が育成されるでしょう。

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